「一所懸命に話しているのに自分だけ空回りして、伝わっている気がしない…」
「反応が薄くて、話していて不安になる」
「何度も言い聞かせるのに、理解できていないようだ」
「セミナー後のアンケートで、あまりいい評価が得られない」
人を相手にお仕事をされている方、部下やチームに指示を出す経営者や管理職の方、セミナー講師などの教える仕事をされる方なら、こうしたお悩みは多いことでしょう。
日本には「目は口ほどに物を言う」という諺(ことわざ)がありますが、「目は口以上にその人の感情を表す」という意味です。
口では肯定的なことを言っていたとしても、相手の仕草や目つきから、なんとなく本心でないことを感じたことはありませんか?
あなたがそう感じたことがあるように、あなたの話を聞いている相手も、そう感じている可能性は大いにあります。
なかなか相手の反応や理解を得られない方に向けて、口以上に物を言う「非言語」のアプローチについてお伝えしましょう。
言葉だけでは伝わらない3つの理由
言葉だけで伝わらない主な理由は、以下の3つです。
- 全身で聴いていないから
- 伝わることに必要な条件を理解していないから
- 非言語コミュニケーションを使えていないから
それぞれ詳しく見ていきましょう。
身体全身で聴いていないから
言葉だけで伝わらない理由の1つ目は、「全身で聴いていないから」です。
私たちは五感すべてを使って「身体全身で聴いている」ことを忘れてはなりません。
例えば「この人、口ではそう言っているけれど、本心は違うな」と思ったことはありませんか?
それは、言葉と身体が表現するものに不一致を感じて「違和感」となるからです。人は、「なんとなく」でそれを察知しています。
それらの違和感は、不信感や疑念を生じさせ、そうすると相手は自己防衛に走って、話の内容よりも「目の前の危機をどのように回避しようか?」といった思考が走り出します。
「安心して素直に聞いてもらえる」ということは、非常に重要なのです。
あなたが相手に与える印象は「この人の話を聴いても良いか?」という聴き手の心理状態を決めています。伝わるかどうかに大きく影響することを知っておきましょう。
伝わるのに必要な条件を理解していないから
言葉だけで伝わらない理由の2つ目は、「伝わるのに必要な条件を理解していないから」です。
伝わるのに必要な条件とは
- 相手が自分の課題を認識しているか
- 相手の内発的な動機を誘発できているか
の2つです。
ここでは「伝えるのに必要な条件」と「伝わるのに必要な条件」を分けて考えていきましょう。
「伝える」のは自分が発してしまえば「伝えた」なのですが、「伝わる」には、情報の受け手となる相手が関わってきます。
よって、「伝わったか」は、「伝えた」とは別物です。
マーケティングを事例に説明します。
おそらく、この記事を読んでくださっている方は、マーケティングを学んでいる方も多いでしょう。
マーケティングは「顧客教育」と呼ばれることがあります。売り手が商品をオファーする前に「どうしてその商品が自分にとって必要なのか」を顧客自身に知ってもらう必要があります。
「どうしてその商品が自分にとって必要なのか」という視点で、顧客に自分の問題を認識してもらう必要があり、それを「顧客を教育する」と表現されています。
マーケティングでは、購買意欲が高まるように、内発的な動機を形成するための情報を顧客の中に蓄積していきます。
実は、動機形成を行うという意味では、このプロセスは本物の教育現場のマインドセットと同じです。
「自分の課題を認識してもらって、内発的な動機によって行動が起こす」という、能動的な姿勢を引き出す手法です。
非言語コミュニケーションを使えていないから
「非言語コミュニケーション」とは、声のトーン、目の動き、身体の動きなど、言葉以外で伝える情報のことを指します。
非言語でコミュニケーションをしている最も身近な例が、「赤ちゃん」と「お母さん」です。
赤ちゃんは喜怒哀楽、自分のニーズを言葉以外の様々な動きや表現で伝えます。そして、お母さんは、その非言語のシグナルから赤ちゃんニーズを読み取ります。
また、言語が通じない土地に行ったとき「身振り・手振り」でどうにかした経験、外国でもボディーランゲージだけでどうにかなったという話を聞いたことはありませんか?
もしくは、あなたが自分で体験したことがあるかもしれません。
非言語コミュニケーションは、年齢・国籍を超えることができます。
私は実際に、南アフリカのケープタウンで開催されたコンテストの国際大会で、スピーチやプレゼンテーションを行い、グランプリを受賞したことがあります。
その勝因を振り返ると、この非言語コミュニケーションを多用していたと自己分析しています。
それ以来、審査員側に回ったり、会社の経営においても人を面接・採用する立場になり、講師業で人が変わっていく現場に立ち会うことが多い身ですが、こうした「非言語」が表現する内容をよく観察して、コミュニケーションをとるようにしています。
昨今、インターネット上で行われる
・オンライン商談
・オンラインでのサービス提供
・動画マーケティング・
・動画講義
などでは、「非言語のコミュニケーション」の力は、特に重要になっています。
今回は、その中でも大事な3つのポイントをお伝えしますので、日々のコミュニケーションに役立ててくださいね。
深い絆を構築するための非言語コミュニケーション3つのポイント
深い絆を構築するための非言語コミュニケーションを実施するためのポイントは、以下の3つです。
- 空間の使い方
- タイミングの使い方
- 声や触覚などの身体の使い方
それぞれ詳しく解説していきます。
空間の使い方
非言語コミュニケーションにおいて「空間の使い方」はとても大切です。
人の集まりに行って、「なんだか場違いだな〜・・・」と気後れしてしまうようなとき、あなたは会場のどこに座りますか?
おそらく後方か端の方を選ぶと思います。
この物理的な空間は、心理的距離を決める一つの要因です。他人が自分に近づいても不快に感じない限界の範囲を「パーソナルスペース」といいます。
誰かがこれより内側に侵入してくると、人は不快に感じたり落ち着かない気持ちになったりします。
つまり、このスペースに入れるか?というのが大事で、深い「絆」を築けた人には、あなたは相手のパーソナルスペースの内側に入れてもらえるはずです。
そのためには、相手がパーソナルスペースに入れたくなるようなあなたであるか?が重要です。
初対面の時は真正面だと少し警戒感が起きる方もいますので、真正面に座るのではなく、左右にずらしたりして、位置も工夫してみてください。
私はよく横並びや角席を好みます。特に日本人は目をみて話すと緊張する方も多いので、こちらから表情が見える位置で目を合わせる必要がないときには「敵」にならないように気をつけています。
ただ、大事な商談などは真正面でお互いに目を見て話しましょう。
相手のパーソナルスペース(空間)を意識し、不快感を与えないように注意するようにしましょう。
タイミングの使い方
非言語コミュニケーションにおいて「タイミングの使い方」もとても重要です。
深い「絆」を築くためには、相手に「この人は私のことを理解してくれている」と感じてもらうことが大事。
相手の話に反応する際に、うなずく、笑顔を見せる、驚くなどのタイミングを適切に取ることで、相手とのコミュニケーションがスムーズになります。
タイミングが早すぎても遅すぎても「この人、私の話を聞いてないな」と思われますし、相手の感情に共感できてない突拍子も無い反応だと、「この人、私の気持ちを理解していないな」となって、心の距離は遠くなっていきます。
早すぎず、遅すぎない「タイミング」を意識して相手とコミュニケーションをとるようにしましょう。
相手の話に途中でジャッジを入れない
相手とのタイミングを図るうえで、相手の話に「ジャッジを入れない」のが大事です。
こちらが言いたいことや主張を先に用意して話を聞くのは、じゃんけんで何を出すか決めている状態です。
じゃんけんは、後出しの方が有利ですよね。
相手がじゃんけんで何を出すのかを見るくらいの心の余裕や、それを受け入れる心の器の大きさを持っておくと、出してきたじゃんけんに「おお、あなたはグーですか。私もグーですよ!」または、「あなたはグーですか。実は私はパーなんです。」などと対応できます。
つまり、大事なのは、相手が出したものを「受け取っているか?」です。受け取る姿勢が「聴く姿勢」を決めていて、心の距離と絆の深さを変えていきます。
タイミングを図るためには「間」を恐れないこと
会話の中の沈黙や間(ま)を好まない方もいらっしゃいますが、何も言わずに一緒に時間を過ごすことも、互いに理解しあっている証となります。
相手が発することを考える時間を与えてください。
発していい場所や発しやすい空間、あえて間(ま)を用意してあげるからこそ、出せるものです。隙がない、間(ま)のないところには、何も入れられないものです。
声や触覚など身体の使い方
非言語コミュニケーションを実施するためのポイントの3つ目は「声や触覚など身体の使い方」です。
深い「絆」を築くために、相手の声のトーン、非言語が指す感情を読み取ってみましょう。
優しさや興奮、不満など、声のトーンにはさまざまな感情が含まれています。
そして、あなたも自分が表現したい感情を声に乗せてみたり、適切なトーンで話すことで、相手に自分の感情や意図を伝えることができます。
気持ちが高まり、自信たっぷりに、誇らしげにふるまう、 得意げで威勢のよいふるまいを【意気揚揚(いきようよう)】と言います。
「意気」は、元気・気概・意気込み、 「揚揚」は、得意げなさまです。
どのような時に、人は意気揚揚(いきようよう)としていますか?意気揚揚(いきようよう)としている人は、どのような声色や声の大きさだと思いますか?
何か誇らしいことをやった人が、その成果や功績を人に自慢するようなとき、その人が内側から大きく膨れ上がるような感じで、胸も顔も上向きになり、声も上向きになっている、そんな絵が浮かびませんか?
意気揚揚(いきようよう)としている人の声は上向きで大きいです。
このように、私たちの感情や心の状態は身体に表れるのですが、声のトーンや大きさは、その一つなのです。
相手に触れる行為の重要性
また、文化的な背景によって、好意的とされる内容は変わりますが、「触れる行為」も、人間関係の中で非常に大切です。
ハグや握手は相手に対する信頼や愛情を示す手段として使われます。また、撫でる、背中を叩くことも、相手への気配りや慰め、励ましの意味を持っています。
映画の中の悲しい別れのシーンで、言葉では何も語られないけれど、一つの抱擁、手を握る力の強さで、その情熱や絆の深さを感じたことはありますよね。
同様に、あなたのアドバイスや励ましも、適切な触れ合いによって深い意味を持つことがあります。
ボディーランゲージの実践例
私が南アフリカのコンテストに出場し、完全アウェイの会場で聴衆から大きな声援をいただいた理由の一つに、ボディランゲージがあるのではないかと分析しています。
アフリカの人たちは、パーソナルスペースに簡単に他人を入れることができる人たちで、ハグやキスをする文化です。
私はステージ上では、日本人的な感覚を捨てて、人生で初めての「投げキッス」を聴衆に対してやってみたのです。
私なりにその土地の文化を理解した上での、「愛しています」の表現でした。日本だったならば、深々とお辞儀をしていたでしょう。
お互いの文化的な慣習を理解しながら、効果的に使いたいものです。
まとめ
非言語コミュニケーションは、言葉だけでは伝えきれない深い感情や情報を相手に伝えるための鍵です。
そして、今回の記事でお伝えしてきた通り、私たちの感情や心の状態は身体に表れます。
相手に効果的に伝えるためには、あなたが本来相手に伝えたいことを、まず心の状態として持っておく必要があり、それを身体が表現しているにすぎません。
これが、経営者やリーダーが心やあり方を磨く理由の一つです。
人と心が通じあい、お互いの感情や考えが「共感」を起こすと、そこに「共鳴」という内側から起こるバイブレーション(振動)が起こります。
人は、このバイブレーションに集まり、バイブレーションの増幅で深い「絆」ができていくのです。
だからこそ、ミッションやビジョン、会社の方針を伝えていく経営者やリーダーは、言葉以上に、その内容が心から出てきたものかが重要なのです。
そして講師やコーチの方は、従業員、スタッフ、お客様など、色々な人と心を通わせ、絆をつくる機会が多いと思います。
「非言語コミュニケーション」の技術を磨くことで、より深い絆や信頼関係を築くことができますので、ぜひ知っておいて欲しい技術です。
北原万紀(きたはら まき)
株式会社GSEコンサルティンググループ
代表取締役
エグゼクティブコーチ / 女性起業家育成 / コーチ育成 / 人材開発・組織開発
個人のミッション・ビジョンを引き出し、最も繁栄する法則にあった人生とビジネスを構築するコーチング技術に高い定評があり、経営者やリーダー層を担当する。
「人間行動学」を基礎技術とする教育コンサルティング事業では、セミナーや講座の教育コンテンツの企画と指導を行う他、人材育成や起業家のビジネスプロデュースを行う。
インターネットのみで繋がる国をまたいだビジネスチームで会社を経営し、時間と場所に制限を受けないチームの働き方を実現。2022年末、日本と世界を繋ぐ国際ビジネスのサポートのためにドバイにて起業、企業海外進出サポートを行う。
Ms. Hope International 2018 世界グランプリ・2022年同大会国際審査員
大阪関西万博 Expo 2025 共創パートナー登録
北原万紀 GSEコンサルティンググループ
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